くまたそが文章の練習のために気まぐれに書き気まぐれに更新したり途中で投げたりするかもしれない、準ぼっち女子高生の話。
11/9/18 開始。
読んだら拍手とか何かしらコメントを残しておくとくまたそが踊る。
11/9/18 開始。
読んだら拍手とか何かしらコメントを残しておくとくまたそが踊る。
『星に願いを』
気付くと壁が築かれている。それも、物凄く冷たい金属質の。
普段は見えないそれは、突如として目の前に現れて私の動きを制限する。正面、横、振り返って後ろ。上にまで。気付けばその壁は私の周りを立方体のように囲んでいる。取り払おうにもどうすればいいか分からない。仕方なく、いつも私は立ち尽くすのだ。
「あ、倉持さん」
ほら。これだ。声をかけられた瞬間、それは姿を現した。固められてなかなか動かない体をなんとか動かし、私は振り返った。クラスの友達、だった。
「何?」
幾分機嫌の悪い色を言葉に込めたが、彼女は動じなかった。
「あのさぁ、倉持さん英語得意だったよねぇ」
瞬間、ガチッと音がしたのではないかと思うくらいのはっきりさでそれを感じる事が出来た。今、彼女と私の間には壁がある。
「でさぁ良かったら」
「いいよ。ノートくらい」
先回りして言ってやる。彼女は一瞬目を丸くしたが、すぐに嬉しそうに言った。
「ほんと!?助かる~。ありがとう!」
「全然いいよそれくらい」
今週に入ってもう3回目だった。いい加減嫌気が差していたが、私はそれを一切顔に出す事はしなかった。何はともかく、彼女達は私の「大人しいけど勉強ができる倉持さん」のイメージをあてにして来てくれている。そのイメージがある限り、クラスでの私の居場所はとりあえず確保される。それを確認できる瞬間だから、仕方ないと思えるようになった。
「倉持さん?いいの?もう今週だけでもそうとう貸しているでしょ」
彼女が嬉しそうにノートを持って去った後、隣の席の奥寺さんが言った。
「いいの。ノートくらいで役に立てるんなら」
そう言うと、彼女は困ったように笑って言った。
「迷惑なら迷惑って言っていいんだからね」
私は、彼女と同じように笑って首を横に振った。彼女は何かと私を心配してくれる、唯一、本当に友達と言っていいかもしれない人だった。だからこそ私がこれを迷惑なんて仮に思ったとしても、お首にも出すことは出来ない。下手に断ろうものなら、彼女にまで問題が飛び火してしまうかもしれない。これだけ快くしていたのに急にノートを貸さなくなったりしたら、彼女が私に何か入れ知恵をしたのではないかと思われてしまうかもしれないから。そんなつまらない事で彼女の立場を悪くさせてしまうなんて、絶対にできない。考えすぎだと言われるかもしれないが、それほど私にとって彼女は大切なのだ。万が一にも無くしたくない、大事な大事な友達なのだ。
「迷惑なんてそんな。思った事ないよ」
殊更、ニコッと笑うように私は返事した。
それは決して嘘ではない。頼ってくれるのは構わない。居場所を作るためにそうされるように仕向けている部分だってあるのだから、私だってまんざらでもないのだ。ただ、そうじゃなくて私が嫌なのは、彼女達がそれだけを求めてくる事だ。ノートを借りていくのなら、私ともっと仲良くしてくれてもいいのにと思ってしまう。彼女達と話すのは、せいぜいあっても朝の挨拶と帰りの挨拶くらいだから。
か細い糸が、私と彼女達をかろうじて結びつけている。……ピンと張り詰めて、今にも切れてしまいそうなのが、目に見える気がした。
「……なら、いいけど」
奥寺さんはなぜか少し残念そうな顔をしてそう言った。少し気になったが、もう帰らなきゃ、とそそくさと私は帰る準備をし、彼女に挨拶をして教室を出た。まだ何か言いたそうな彼女が横目に入ったが、やっぱり何も言わなかったのでそのままにした。
そして私はいつものように、校舎の窓から差す夕日を感じながら、携帯を取り出すのだった。また、我慢できなかった。
携帯では限界がある。早く帰ってPCを立ち上げたいと、放課後になってからそればかりを考えていた。家までのせいぜい30分間でさえ、煩わしい。だから私はその間、いつも携帯をいじりっぱなしだ。そのせいで人にぶつかったり、電柱にぶつかる事もある。その度に謝り、恥ずかしさに周りを伺い、誰も見ていなかった事に胸を撫で下ろす。それでも懲りずにまた私は携帯に目を落とす。この所、私はつくづく思うのだった。これじゃまるで、時折夜の駅のホームで見る、酔っぱらいの中年男みたいだと。
会社の飲み会で、大好きな酒を飲み過ぎる。そのせいで上司にそそうして怒られて、平謝り。その帰りには、ふらふらになりながら人にぶつかって迷惑をかけて以下同文。家に着けば妻にどやされ、娘には汚いものでも見るかのように蔑まれて、朝になってからもうこんなのは御免だと思ってみても、来週の金曜には同じ事をしている。
私のこれは、これとちっとも変わらないんじゃないかと思ってしまう事があるが、辞められずにいる。こんな、私みたいな普通の女子高生からしたら、最悪の比喩が自分に当てはまるように思ってしまっているのに、だ。私がこうなってしまったのは、最近あるwebサービスにハマっているせいなのだった。
気付くと壁が築かれている。それも、物凄く冷たい金属質の。
普段は見えないそれは、突如として目の前に現れて私の動きを制限する。正面、横、振り返って後ろ。上にまで。気付けばその壁は私の周りを立方体のように囲んでいる。取り払おうにもどうすればいいか分からない。仕方なく、いつも私は立ち尽くすのだ。
「あ、倉持さん」
ほら。これだ。声をかけられた瞬間、それは姿を現した。固められてなかなか動かない体をなんとか動かし、私は振り返った。クラスの友達、だった。
「何?」
幾分機嫌の悪い色を言葉に込めたが、彼女は動じなかった。
「あのさぁ、倉持さん英語得意だったよねぇ」
瞬間、ガチッと音がしたのではないかと思うくらいのはっきりさでそれを感じる事が出来た。今、彼女と私の間には壁がある。
「でさぁ良かったら」
「いいよ。ノートくらい」
先回りして言ってやる。彼女は一瞬目を丸くしたが、すぐに嬉しそうに言った。
「ほんと!?助かる~。ありがとう!」
「全然いいよそれくらい」
今週に入ってもう3回目だった。いい加減嫌気が差していたが、私はそれを一切顔に出す事はしなかった。何はともかく、彼女達は私の「大人しいけど勉強ができる倉持さん」のイメージをあてにして来てくれている。そのイメージがある限り、クラスでの私の居場所はとりあえず確保される。それを確認できる瞬間だから、仕方ないと思えるようになった。
「倉持さん?いいの?もう今週だけでもそうとう貸しているでしょ」
彼女が嬉しそうにノートを持って去った後、隣の席の奥寺さんが言った。
「いいの。ノートくらいで役に立てるんなら」
そう言うと、彼女は困ったように笑って言った。
「迷惑なら迷惑って言っていいんだからね」
私は、彼女と同じように笑って首を横に振った。彼女は何かと私を心配してくれる、唯一、本当に友達と言っていいかもしれない人だった。だからこそ私がこれを迷惑なんて仮に思ったとしても、お首にも出すことは出来ない。下手に断ろうものなら、彼女にまで問題が飛び火してしまうかもしれない。これだけ快くしていたのに急にノートを貸さなくなったりしたら、彼女が私に何か入れ知恵をしたのではないかと思われてしまうかもしれないから。そんなつまらない事で彼女の立場を悪くさせてしまうなんて、絶対にできない。考えすぎだと言われるかもしれないが、それほど私にとって彼女は大切なのだ。万が一にも無くしたくない、大事な大事な友達なのだ。
「迷惑なんてそんな。思った事ないよ」
殊更、ニコッと笑うように私は返事した。
それは決して嘘ではない。頼ってくれるのは構わない。居場所を作るためにそうされるように仕向けている部分だってあるのだから、私だってまんざらでもないのだ。ただ、そうじゃなくて私が嫌なのは、彼女達がそれだけを求めてくる事だ。ノートを借りていくのなら、私ともっと仲良くしてくれてもいいのにと思ってしまう。彼女達と話すのは、せいぜいあっても朝の挨拶と帰りの挨拶くらいだから。
か細い糸が、私と彼女達をかろうじて結びつけている。……ピンと張り詰めて、今にも切れてしまいそうなのが、目に見える気がした。
「……なら、いいけど」
奥寺さんはなぜか少し残念そうな顔をしてそう言った。少し気になったが、もう帰らなきゃ、とそそくさと私は帰る準備をし、彼女に挨拶をして教室を出た。まだ何か言いたそうな彼女が横目に入ったが、やっぱり何も言わなかったのでそのままにした。
そして私はいつものように、校舎の窓から差す夕日を感じながら、携帯を取り出すのだった。また、我慢できなかった。
携帯では限界がある。早く帰ってPCを立ち上げたいと、放課後になってからそればかりを考えていた。家までのせいぜい30分間でさえ、煩わしい。だから私はその間、いつも携帯をいじりっぱなしだ。そのせいで人にぶつかったり、電柱にぶつかる事もある。その度に謝り、恥ずかしさに周りを伺い、誰も見ていなかった事に胸を撫で下ろす。それでも懲りずにまた私は携帯に目を落とす。この所、私はつくづく思うのだった。これじゃまるで、時折夜の駅のホームで見る、酔っぱらいの中年男みたいだと。
会社の飲み会で、大好きな酒を飲み過ぎる。そのせいで上司にそそうして怒られて、平謝り。その帰りには、ふらふらになりながら人にぶつかって迷惑をかけて以下同文。家に着けば妻にどやされ、娘には汚いものでも見るかのように蔑まれて、朝になってからもうこんなのは御免だと思ってみても、来週の金曜には同じ事をしている。
私のこれは、これとちっとも変わらないんじゃないかと思ってしまう事があるが、辞められずにいる。こんな、私みたいな普通の女子高生からしたら、最悪の比喩が自分に当てはまるように思ってしまっているのに、だ。私がこうなってしまったのは、最近あるwebサービスにハマっているせいなのだった。
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