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圧倒的説明回。若干粗いから直す事があるかもわからない。
広告のせいで見にくいが、広告の下に続きを見るがあるます。

拍手[1回]


 私は歩きながら携帯を操作し、いつもの青い背景を画面上に出した。

『Twitter』

 PCでネットをしていると、ちょくちょく目に入るこのサービス。一体何なんだろうと思って、よく知りもせずにとりあえずアカウントを取ってみたのだが、これがなかなかどうして面白いものだった。
 基本的には、一方的に自分が普段思った事などを『呟く』事ができるサービスなのだ。例えば、『渋谷に来た。人がいっぱいだー』だとか、『バイト疲れたー。休憩なう』といった具合だ。『なう』というのは今まさにそれをしているよ、という事を表すツイッター上でよく使われる表現だ。こういったことを延々とする事ができるというものだが、もちろんこれだけではない。

 フォローという機能がある。これをある相手にすると、自分のタイムラインと呼ばれる呟きを表示する所に、その人の呟きが表示される事になる。自分の趣味の合った人や友達をフォローしておけば、そこに彼らの呟きが表示されるというわけだ。
 この機能は、例えばMIXIのようなSNSサイトのフレンド申請とは違ってかなり気軽にできるのが売りだ。何せ殆どの場合、相手の承認無しでこれをすることが出来る。お互いにフォロー関係を築く必要がないから、もういいかなと思えば適当にフォローするのを中止すれば良い。この気軽さが、ツイッターが爆発的に普及した原因だと私は思っている。

 すでに、私もいろんな人をフォローしていた。話の合う同じ高校二年生、大学生やOL。気になる有名人や俳優。色んな人だ。当然フォローするとそれが相手に伝わるから、一般の人はフォローを返してくれたりする。そうすると彼らは自分のフォロワーとなり、相互の呟きがタイムライン上で見れる状態になる。
 ここまでくると、SNSサイトのフレンド登録とそこまで大差のない状況となるが、私はこちらの方が自分に合っている気がしていた。そういった日記が主なサイトとは違って、こちらはかなり瞬間的なツールだからだ。まさに今、この瞬間、の彼らがそこには存在している。そこが好きなのだ。

 気付くと、私は学校から駅までの道の、ちょうど半ば辺りまでさしかかっていた。私は嬉々として、彼らの軌跡を遡ろうとタイムラインををスクロールさせていた。
 その時だった。

「うわ!……っととと」

 油断するとすぐこうなる。私は何かにけつまずいて、持っていた携帯を落としそうになった。何とかお手玉のように携帯を宙で操って掴み、危うく難を逃れる。私は深く息を吐いて、胸をなでおろした。もし落としてこれが壊れでもしたらと思うと、ぞっとする。心の中で、よく自分に言い聞かせた。これは、私の命みたいなものだ。間違っても命を落とすわけにはいかないだろう、と。
 もう放すまいとがっしり携帯を掴みながら、私はきょろきょろと周りを伺った。人通りの少ない道を選んでいるおかげで、特に誰かに見られてはいないようだった。と言うより、周りを見渡しても人っ子一人いない。近くにある団地の、建物と建物の間から流れるビル風の音だけが、この近辺を支配している。いささか、寂しいくらいのものだった。

 しかし一体何のせいで命を落としかけたのか。振り返ってみると、近所の子供の悪戯なのか、どかんと拳骨大くらいの大きめの石が、歩道のど真ん中に置かれているのだった。普通に歩いている人ならまず気付いて取り除けるだろうが、私にとってはこんな単純な悪戯でも十分脅威だ。全くもって忌々しい。思い切り蹴飛ばしてやろうかと思ったが、万一人に当たったらまずい大きさだったし、近頃せっかく新調したローファーに傷がつくからやめておいた。

 行き場のないもやもやとした感情をどこにぶつけていいか分からなくて、私は今起こった事を早速呟いてやろうと思い、スクロールして遡ったタイムラインを再びツイート送信欄まで戻そうとした。しかし、私の手はそこでピタリと止まった。
 自分のフォローしている人数とフォローされている人数が表示されている部分。それが、タイムラインの下部にある。そこの数字に、違和感があった。

(増えてる……?)

 確か、昨日までのフォロワーの数は半端な数字だったはず。今は30になっていて、こんなキリのいい数字じゃなかったのは明白だ。フォロワーが増えている。それが分かった瞬間、私は歓喜した。
 フォローされる、というのはそれだけで気持ちの良い事なのだ。少なくとも自分に何かしらの興味を持ってくれているという事だから。今ではこの人数は、私にとって一種のステータスになりつつある。ドキドキしながら私はその人のプロフィールを見た。この瞬間が、いつもたまらない。


 ユーザー名は、『geno777』。
 プロフィールは…………入力されていない。特に無しだ。


 私は少しがっかりした。詳しく見てみても、その人のツイート数は1。この人自身のフォロワーは0で、フォロー数は1。つまり、私しかフォローしていないという事になる。ほとんど今アカウントをとってきたと言ってもいい状態だった。これでは一体どういう人なのかがさっぱり分からない。なぜ私を最初にフォローしようと思ったのかも不明だ。
 名前もなんだか気味が悪かった。ゲノというと、少し前から流行っているGENOウイルスというコンピューターウイルスを連想させる。縁起のいい数字がついてはいるが、あまりいいユーザー名とは言えないだろう。

 肝心のツイートはどうだろうか。そう思って、その人の唯一のツイートを見てみた。しかし……

【勇気を持って】

 ただ一言。それだけだった。
 この呟き自体の日付も今日の午前中で、どうやら本当にアカウントを取ってきたばかりの人のようだった。きっと何をしていいかも分からず、何となく呟いてみたのだろう。
 これだけでは何とも言えないが、空欄でそっけないプロフィールから一転、その人間臭い一言に少し私の警戒感は薄れていた。誰かへの激励か。それとも、自分を奮起させるための言葉か。何となく後者かなと思って、頑張れ!という意味も込めてフォローし返した。自分のアカウントの取りたての時を思い出し、少し親近感もあったから。

 私は、自分のタイムラインに画面を戻した。
 こうして、私の世界は日々広がっている。私の呟きに反応して言葉をくれる人もいる。私が嬉しそうに呟くと、【良かったですね!】と返信が来たり、私が学校で失敗してへこんだ事などを呟くと、【気にしない方がいいですよ】などと返信をくれたりする事もある。『リプ』と呼ばれる機能だ。これはある相手のタイムライン上にだけ呟きを返信できる機能で、呟きの前にアットマーク付きでユーザー名を入れる事でそれが可能になる。これを利用して、私はフォロワーの人と仲良くなっていった。

 もはや一つの世界。現実とは違った世界がそこにはあって、私にとってそこはまさに、楽園だった。学校の友達との間にある壁が、そこには存在しない。誰でも私に干渉できて、私も誰にでも干渉する事が出来る。とても気持ちの良い世界だった。

【道の真ん中にでっかい石があってこけそうになった!マジ最悪><】

 だから今日もこうして呟いている。広がらない世界より広がる世界。その世界に、どがつくハマリ方を、私はしているのだった。

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